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Futurist Meetup 第9回 『胚培養士・法哲学者と考える生殖医療の未来』(講演)

公開:2018.08.25 最終更新:2018.11.27

倫理お知らせ

桜十字ウィメンズクリニック渋谷培養部です。

 

2018年8月22日(水)に、株式会社デジタルガレージ内のDG Labという研究開発部門が主催する第9回 Futurist Meetupにて講演を行ってきましたのでご紹介したいと思います。(詳細はこちら

 

デジタルガレージは、カカクコムの取締役会長を勤める林 郁さん、MITメディアラボ所長を務める伊藤 穰一さんらがホストとなり「インターネット時代の『コンテクスト』を創っていく会社」として創業されました。その中のDG Labは、「バイオヘルス」「人工知能」「ブロックチェーン」「VR/AR」「セキュリティ」に重点を置いて、新たな事業を生み出すために発足した研究開発組織です。

 

今回は、その事業の一環として行われている『Futurist Meetup』という、ワークショップを兼ねた講演会にて発表を行ってきました。

今回で、9回目を迎える『Futurist Meetup』は、ある特定の専門分野で技術や高い知識を持つ人達を集め、研究開発に関心のある起業家やエンジニア、デザイナーなどに向けてアイデアを提供し、活発に議論しながら開発に打ち込める環境を作る事を目的として、毎月1回のペースで行われています。

全体のスケジュールは以下の通りです。
18:30~ 開場
19:00~ 開始 オープニング・参加者紹介
19:05~ 講演1:胚培養士 川口先生『生殖補助医療(ART)の現状から、未来のARTを考える』
19:30~ 講演2:法哲学者 吉良先生『生殖技術とその規制 ~法哲学的検討~』
20:00~ パネルディスカッション
20:30~ 懇親会・意見交換会
21:00  終了


(講演中の様子)

今回、一緒に講演をさせていただいた法哲学者の吉良 貴之先生は、東京大学法学部を御卒業され、現在は東京大学、国際基督教大学、宇都宮共和大学、立教大学などで教壇に立ち『法』と『哲学』の観点から、地球環境問題や生殖倫理などの“科学技術”の社会的なあり方などを研究されていらっしゃいます。(吉良先生HPはこちら

今回の講演では、生殖医療という観点から、特に“子どもの権利”や“新しい家族のあり方”に注目してお話しをされていらっしゃいました。

例えば、将来的に着床前診断や出生前診断(※受精卵の段階ないし胎児が産まれてくる前に行う遺伝子診断)が当たり前の世の中になった時に、もしその診断を行わなかった事で、産まれてきた子どもに何らかの障害があった場合、「こういった技術があるのになぜ検査をしなかったのか?」と子どもが親を訴えるといった裁判が起こる可能性や、着床前診断や出生前診断が持つ『特定の遺伝子疾患の排除』という側面が、既に特定の遺伝子疾患を持って生活している人達へのヘイトにつながるのではないか?といった事を、実際にあった海外の判例などを取り上げ言及されていました。


(パネルディスカッションの様子 左:司会の田中さん(DG Lab) 中:吉良先生 右:当院胚培養士)

講演後に行われたパネルディスカッションでは、生殖医療分野において現在までにどのようなことが可能になっているのか?といった技術的な質問や、そういった技術をどう応用していくのか、あるいはどのように生殖医療分野に関する規制を作っていくべきか?といった議題について、吉良先生も加わって活発なディスカッションと意見交換を行いました。


(懇親会の様子)                                      

講演後の懇親会では、個々にたくさんのご質問などいただきましたが、研究者や大学の先生、開発事業、メディア関連など、参加されていた方々の背景や視点が多種多様であることから、それぞれの方々が生殖補助医療に対し、たいへん面白いアプローチを考えておられ、お一人おひとりの方から非常に面白いアイデアをたくさんいただきました。

今回は、ゲストスピーカーという立場でお話しさせて頂いたものの、反対に非常に貴重な体験をさせていただき有り難く思っています。

今後もこういった場に積極的に参加し、様々な方々と交流を深めていきたいと感じました。