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妊活サプリメントでよく見る葉酸とは?

公開:2018.10.11 最終更新:2020.11.16

研究結果基礎知識不妊と食事サプリメント生活習慣

桜十字ウィメンズクリニック渋谷培養部です。

妊活中の方や不妊治療を受けていらっしゃる方はインターネット等で妊活サプリメントを目にする機会もあるかと思います。また、その多くが葉酸のサプリメントかと思いますが、なぜ葉酸が妊活に必要なのか皆さんご存知でしょうか?

なぜ葉酸が妊活に必要なのか?

最近「葉酸を摂ると妊娠しやすくなるんでしょ?」といった間違った認識をされていらっしゃる方が非常に多いように感じます。「えっ?違うの??」と思われたそこのあなたへ、なぜ葉酸が必要なのか?を詳しくご紹介していきたいと思います。

まず、葉酸とはビタミンB群の一つで血液(赤血球)を作ったり、細胞を作るために必要な核酸を合成したりする作用があります。一部を除いてビタミンは人間の体内では作ることができないため、必要な量をバランス良く食事などから摂取しなければ身体に様々な支障をきたします。

例えば、ビタミンと言われてすぐに思い付くものにビタミンCがあると思います。この最もメジャーなビタミンCは不足し続けると壊血病という出血性の障害を引き起こします。17世紀の大航海時代のヨーロッパで、船乗り達が長距離を航海していた際に野菜や果物を摂取することが出来ず壊血病にかかったと言われています。

話を元に戻しますが、なぜ妊活にこの葉酸が必要なのでしょうか?

神経管閉塞障害と葉酸の効果

近年、諸外国の研究において葉酸を摂取することで赤ちゃんの神経管閉塞障害のリスクが減らせるということがわかってきました。(※International Clearinghouse for Birth Surveillance and Research, Annual Report, 2013

神経管閉塞障害とは人間の脳や脊髄を作る神経管が妊娠初期に正常な形成が行われないことによって起こる障害で、脊髄に異常が起こることに起因する運動機能障害や脳が形成されない無脳症といった病気を指します。

中でも日本で問題となっているのが神経管閉塞障害の一つである二分脊椎症でアメリカやヨーロッパ諸国、オーストラリアなどでは発生率が減少傾向にあるものの、日本では増加の一途をたどっています。(※平成26年 日本産科婦人科学会, 産婦人科診療ガイドラインより

葉酸の摂取はこれらの神経管閉塞障害に加えて、その他の先天性形態異常のリスクを減少させることにも効果があるのではないかと考えられています。

こうした葉酸の効果を普及させるため、厚生労働省は平成12年から妊娠を考えている女性に対して葉酸摂取の重要性を周知するとともに、その他ビタミンを多く含む栄養バランスのとれた食事が必要であることなどの情報提供を積極的に行っています。(※平成12年12月 厚生労働省, 先天異常の発症リスクの低減に関する検討会, 神経管閉塞障害の発症リスクの低減に関する報告書より)

また、この中で少なくとも妊娠1ヶ月以上前から妊娠3ヶ月までの間は葉酸をはじめ、その他ビタミンの摂取を推奨しています。

ここで話は最初に戻りますが、葉酸は「妊娠しやすくなる栄養素」ではなく「赤ちゃんのための栄養素」であることを覚えておいてください。

一方で神経管閉塞障害には様々な要因が絡んでいますので、葉酸摂取だけで発症を防ぐことは難しいこともあります。また、神経管閉塞障害の赤ちゃんが産まれても、その原因が葉酸の摂取不足であると断定することは出来ないということも付け加えておきます。

葉酸が含まれる食品と摂取量

それでは具体的にどのように葉酸を摂取していけば良いでしょうか?一日に必要な摂取量は下記のように推奨されています。

  • 成人女性で240μg
  • 妊婦さんでは通常の倍の480μg
  • 妊活中女性ではさらに多く640μg

次に葉酸を多く含む食品を以下の表にまとめました。

葉酸を多く含む食品一覧

表を見てお分かりいただける通り、妊活中の女性が摂取するべき推奨量を食事のみで摂取することは容易ではありません。また葉酸は水溶性のビタミンで水に溶けやすく熱に弱いと言った性質を持っています。そのため、上記の成分表に従って頑張って食事を摂っても実際の摂取量は大幅に低減されてしまいます。

厚生労働省の調査によると、日本人女性の多くがビタミン・ミネラルの推奨摂取量を満たしておらず、1日の野菜摂取目標量350gを摂取できているのは日本人女性全体の約17%ほどであると報告されています。(※平成28年 厚生労働省 国民健康・栄養調査より)

そこで有用なのがサプリメントで付加的に摂取することです。あくまでも栄養バランスのとれた食事を摂ることが大前提ですが、摂取が難しく不足しがちな葉酸をサプリメントなどで付加的に摂取することは国としても推奨しています。

レバーとビタミンA過剰症の注意

上記の表を見ると、レバーには特に多くの葉酸が含まれているのがわかるかと思いますが、レバーにはビタミンAも非常に多く含まれています。ビタミンAも身体には必要な栄養素の一つですが、ビタミンAは脂溶性のビタミンであるため体内に蓄積されやすく、過剰に摂り過ぎるとビタミンA過剰症となってしまいます。

ビタミンA過剰症になると頭痛や吐き気、肝脾腫大、関節痛などが引き起こされ、妊娠中では胎児にも悪影響であると報告されています。

また、レバーの生食での提供・販売は食中毒などの原因になるため食品衛生法によって禁じられています。レバーを食べる時は必ず加熱して過度の摂取にはくれぐれも注意してください。

 

厚生労働省が推奨するように、健康的で栄養バランスのとれた食事に加えて、葉酸のみならず不足しがちな栄養素をサプリメントなどでしっかりと補うことを習慣づけることが、妊活に限らず健康的な身体づくりへの第一歩につながるのかもしれませんね。

※当院でも葉酸を含むサプリメントを扱っております。ご希望やご相談がございましたら来院時にスタッフまでお申し付けください。