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妊娠に重要な栄養素『ビタミンD』と『カルシウム』のお話し ~Part.2~

2018.10.13 研究結果

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

前回、妊娠の前後に重要な栄養素として、魚介類に多く含まれる『ビタミンD』『カルシウム』について取り上げました(こちら)。

 

実のところ、ここ数年間で、これらの栄養素の欠乏がヒトの生物学的な生殖プロセスにどのような影響を与えるのか?といった研究が急増しています。その背景には、不妊に悩む方が増加している社会的な問題に加え、現代的な食生活の偏りなどによって、特定の栄養素のみが不足するといった現象が起こっていることが挙げられます。

 

『ビタミンD』『カルシウム』も例外ではなく、カナダの研究グループの調査によると、妊婦の約80%が妊娠前からビタミンDを含むサプリメントを摂取しているにも関わらず、その多くがビタミンDの推奨摂取量を下回っていると報告しています。

 

今回は、臨床栄養学のカテゴリで最も高い評価を受けている学術誌The American Journal of Clinical Nutrition より、これらの栄養素に関する最新の研究をご紹介します。

 

カナダ・バンクーバーのChild&Family Research Institute(CFRI)の上級科学者で、British Columbia Universityで食品システム学を務めるTim J. Green准教授は、妊娠の前後に『ビタミンD』を含むサプリメントを摂取していた女性が、食事や日光曝露からは十分な量が摂取できていない可能性があると指摘しています。

 

本論文では、カナダ国内の妊娠中の女性336人を対象として、ビタミンDを含むいくつかのビタミンの血中濃度を測定し、カナダ保健省ならびに学会が推奨しているレベルとの比較検討を行いました。

 

その結果、約65%の女性において、カナダ産科学会が推奨している、妊娠中に必要とされるビタミンDレベルよりも低い値を示しました。また約24%の女性では、カナダ保健省が推奨する一般の成人女性(妊娠していない女性)に必要とされるレベルよりも低い値を示しました。

 

Green教授は、「ビタミンDならびにカルシウムが、女性の妊娠のプロセスや妊娠後の胎児の発育・健康に不可欠であることは分かっているが、現段階では、妊娠前後において女性が最適な健康状態を得るために、ビタミンDがどれだけ必要かについては世界中の研究者が模索している段階である」とする一方で、「国や学会から多くの勧告があるにも関わらず、かなりの数の女性が、十分なレベルの栄養素を得ていないということをこの研究は明らかにした」と述べています。

 

過去にもお伝えした通り、『ビタミンD』『カルシウム』は骨や歯の成長・発育に不可欠な栄養素です。胎児においては、ビタミンDの欠乏が出生体重の減少と関連していることや、くる病(※乳幼児の骨格異常を示す病気)”につながる可能性が先行研究より指摘されています。また、ビタミンD欠乏を示す新生児では、将来的に骨粗鬆症や1型糖尿病、喘息などを発症するリスクが増加する可能性も指摘されています。

 

本論文では、『ビタミンD』が不足しがちになる理由として様々な見解が挙げられていますが、この論文の共著者で、カナダ・モントリオールMcGill University臨床栄養学のHope A. Weiler教授は、“カナダ”という土地や環境についても考察しています。

 

「人間は太陽光を浴びることによってもビタミンDを得られることが知られているが、カナダの気候では、月のほぼ半分つまり年間にすると約5~7ヶ月の間、我々は太陽の光をほとんど見ることができない」と述べています。

 

Green教授は、「食品中にビタミンDが添加された栄養強化食品では、成人女性に必要な量は含まれていない。妊娠に向けて、あるいは妊娠した後に女性がどれくらいの量を摂取すべきなのか、そしてそれがどの程度効果があるのかは非常に重要であり、国を上げて勧告をしていく必要がある」としています。

ちなみに厚生労働省が発表している日本でのビタミンDの必要摂取量は5.5-7.0μg/日と定めています。

 

だいぶ寒い季節になっては来ましたが、健康的な食生活に気を付けることはもちろん、天気の良いには外へ出て太陽の光をたっぷりと浴びることが、妊娠への近道になるかもしれませんね。