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【院長ブログ】サイトカインを付加した胚培養液は体外受精の臨床成績を改善する可能性あり

2019.11.29 研究結果

こんにちは

桜十字渋谷バースクリニック院長の井上です。

サイトカインは胚の発達、細胞ストレス、アポトーシスを調節し、着床を促進します。このサイトカインを胚培養液内に付加すれば体外受精の成績が向上するのではないかという報告をご紹介します。

2019年10月 Fertility and Sterilty
”Cytokines hold promise for human embryo culture in vitro: results of a randomized clinical trial”

顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、ヘパリン結合表皮成長因子様成長因子(HB-EGF)、および白血病抑制因子(LIF)は、in vivoでの胚発生を調節すると報告されています。 GM-CSFはマウス胚の発育、着床を改善し、ヒト胚の着床をより維持しようとします。 HB-EGFは、in vitroでマウスおよびヒト胚の胚盤胞の発達、孵化、および成長を促進し、遺伝子ノックアウトにより着床障害を引き起こすインテグリンを増加させる。LIFは、マウス、ウシ、およびヒトの胚盤胞形成および孵化を促進します。

これらのサイトカインを培養液に付加し、付加していない群と比較しICSI後の胚発生、臨床成績に影響するか検討しています。

<結果>
前臨床実験では、68個の胚盤胞の着床前スクリーニングが行われ、サイトカイン濃縮の有害な影響がないと判断しています。
443人の女性が参加し7,139個のMII卵を対象とし受精方法はICSIを行っております(サイトカイン群= 3,583およびコントロール群= 3,556)。
サイトカイン群は、コントロール群と比較して進行妊娠率の改善を示しました(106/224 [47%] vs. 78/219 [36%])。サイトカイン群は、コントロール群と比較して出生率(101/224 [45%]対71/219 [33%])および累積出生率(132/224 [ 60%] vs. 97/219 [44%])および流産率の低下(27/124 [22%] vs. 37/103 [36%])と改善がみられました。サイトカイン群は、胚盤胞の発育、品質、凍結保存において優れていました。
症例数は少ないですが、RIF・反復流産を対象としてもの進行妊娠率、流産率、出生率、累積出生率もサイトカイン群が良好な結果でした。

<まとめ>
ICSI後胚培養液のGM-CSF、HB-EGF、およびLIFの付加は、標準培養液と比較して、進行妊娠率、累積着床率、生児出生率、および累積生児出生率の改善を示しました。
特にRIFまたは反復流産の改善に影響を与える可能性がみられました。

ただ、コストもかかりますし安全面も気になるところです。