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人工授精(IUI)において妊娠率に影響する因子

公開:2020.10.20 最終更新:2021.03.12

研究結果

こんにちは
桜十字ウィメンズクリニック渋谷院長の井上です。

本日は人工授精(IUI)において妊娠率に影響する因子を調査した報告をご紹介いたします。

人工授精(IUI)とは?

人工授精は受精に十分な精子を子宮内に精子を注入することで妊娠を促す治療法です。精液中にあるプロスタグランジンという物質が子宮収縮させる可能性があるため、精液を洗浄してプロスタグランデジンなどの不純物を除去して運動精子を濃縮し子宮内に注入します。

人工授精の成功に影響する因子として報告されているものとして、女性の年齢、卵巣刺激に対する反応性および調整後の総運動精子数があります。調整後の総運動精子数が 100 万から 500 万が 人工授精 の下限閾値ははないかと報告されています。

今回の報告は原因不明不妊の方900人の2,695回の卵巣刺激を行なった 人工授精 サイクルを対象として生児出産の予測因子を調査しています。

<調査結果>

  • 胚移植時に超音波を使用して胚移植場所を決めるが人工授精で行なったら妊娠率は上昇するか?
    →超音波を見ながらの人工授精周期では超音波なしの周期と比較して出生率は変わりませんでした。
  • カテーテルの違いで妊娠率は変わるか?
    →硬いカテーテルで行われた人工授精は柔らかいカテーテルで行われた人工授精よりも出生率が低かったが、統計学的に有意ではありませんでした。
  • 子宮内にカテーテルを挿入しにくい場合は妊娠率は変わるか?
    →カテーテルを挿入しにくい→複数回の人工授精→人工授精による出血→人工授精による不快感など、困難な人工授精はそうでない人工授精周期よりも出生率が低くなりました。
  • 精子の調整法(swim upや密度勾配遠心法など)
    →人工授精の精子調製法は出生率とは関係していません。
  • hCG投与から人工授精までの時間
    →hCG投与から人工授精までの時間も妊娠率に関係していません。
  • 処理後の総運動精子数
    →人工授精の調整後の総運動精子数は出生率と関連しており、 1,510万〜2,000万(14.8%)と500万以下(5.5%)を比較すると、1,510万〜2,000万において出生率が大幅に増加していました。

    調整後の総運動精子数 510万〜1,000万(8.1%)、1,010万〜1,500万(9.3%)、2,000万(8.9%)の生児出生率は500万以下の場合と変わりはありませんでした。また、100万以下(4 / 79、5.1%)の人工授精サイクルでも出生例があり、 100万〜500万以下(22 / 397、5.5%)のサイクルでの出生率と有意差はありませんでした。(サンプルサイズが小さい)

<まとめ>
人工授精による患者様の不快感や処理後の総運動精子数は生児出産率と関連しており、hCG注入から人工授精までの時間、精子調製法、超音波ガイド下IUIは生児出産と関連していませんでした。