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初期胚の受精・卵割スピードは出産に至る胚と関係している

公開:2021.04.08 最終更新:2021.04.01

研究結果

こんにちは
桜十字渋谷バースクリニック院長の井上です。

出産に至る胚の動態について調査している報告をご紹介します。

体外受精において、妊娠・出産には最適な胚を選択することが重要となります。そのためにはガードナー分類など胚の形態から妊娠・出産しそうな胚を選択したり、タイムラプス培養器を使用し分裂具合で良好な胚を選択します。胚の動態において速い発育動態は、胚の細胞数、胚盤胞形成、着床率、妊娠率と関連していると報告されています。

今回は
1)出産に至る胚は、受精および卵割が早い動態を示しているか?
2)年齢は、初期の発育形態と出産との関連に影響を及ぼすか?
を調査している報告をご紹介いたします。

Fertility and Sterility
“Faster fertilization and cleavage kinetics reflect competence to achieve a live birth after intracytoplasmic sperm injection, but this association fades with maternal age”

新鮮胚移植 1,066人を対象とし、4,915個の胚のうち2,093個が形態学的に選択され、2日目または3日目にシングル(SET)、ダブル(DET)、またはトリプル(TET)移植が行われています。

1)出産に至った胚(LB)と出産に至らなかった胚(NLB)の形態動態をタイムラプス培養器で比較しました。
2)LBとNLBの形態動態パラメーターを37歳未満と37歳以上で比較しました。

以下の形態動態を比較しています。
tPNf:前核が消失した時間。
t2:2割球胚が同定された時間。  t3:3割球胚が同定された時間。 t4:4割球胚が同定された時間。 t5:5割球胚が同定された時間。 t8:8個割球胚が同定された時間。

404SET:総胚移植の33.5%、392患者、404胚、
642 DET:総胚移植の53.2%、530患者、1,284胚、
160 TET:総胚移植の13.3%、144患者、480胚。
1,206回の移植のうち、1,001回が3日目移植に、205回が2日目移植が行われました。移植あたりの生児獲得は、それぞれ27%(325 / 1,206)と21.7%(262 / 1,206)でした。

年齢に関係なくすべての患者を一緒に分析した場合、すべての形態動態(tPNf、t2、t3、t4、およびt8)は、NLB胚よりもLB胚で到達スピードがはやかった。

一方、年齢に応じてグループ化された胚では、すべての形態動態は、37歳未満の患者のNLB胚よりもLB胚の方が到達スピードがはやかったが、37歳以上のLB胚とNLB胚の間に差は観察されませんでした。

<結論>
出産に至る胚は、受精と卵割の速さに関連している可能性があります。しかし、このデータより、初期発生動態と出産に至る胚の能力との関係が母体の年齢とともに薄れることを示しています。したがって、初期胚発生の形態動態は、若い患者さんの胚選択には参考となる可能性がありますが、高齢患者さんでは非常に限られているようです。

 

この報告は新鮮初期胚胚移植の検討であり、胚盤胞や凍結胚ではどうなるか知りたいところです。また、年齢が高くなると卵割スピードが出産可能胚と関係がなくなる可能性があるのも興味深いです。