Staff Blog

【院長ブログ】亜鉛の生殖における役割について

公開:2021.06.19 最終更新:2021.06.18

基礎知識不妊と食事サプリメント

こんにちは
桜十字渋谷バースクリニック院長の井上です。

今回は亜鉛についてお伝えします。

亜鉛 (Zn) は、多くの正常な身体機能に必要な必須微量元素です。体 内 で は つ く ら れ な い た め 、 必 ず、食 事 か ら 取 り 入 れ る 必 要 が あ り ま す 。亜鉛の不足は、人体に様々な異常を引き起こす可能性があります。人間の成長段階での亜鉛欠乏は、ホルモンの不均衡による成長障害を引き起こし、性腺の発達に影響を及ぼします。世界保健機関 (WHO) は、世界人口の 3 分の 1 が Zn が不足していると推定されております。亜鉛は、生殖における重要な役割と、抗酸化および抗炎症作用があると言われています。Zn は、正常な受精に必要であり、精液中の Zn 含有量は血液中の 85 ~ 90 倍であり、精子細胞を細菌の攻撃から保護することが示されています。亜鉛欠乏症には、脱毛、下痢、性的成熟の遅延、インポテンス、男性の性腺機能低下症、皮膚病変、脳の認知機能などがあります。

今回、Reprod Sci. 2021 Jan 7;16.を参照に亜鉛についてご紹介します。

亜鉛は、男性と女性の両方の生殖器官の機能と、減数分裂の完了と良質の胚盤胞の作成に不可欠な要素です。亜鉛は、卵母細胞の減数分裂の主要な調節因子です。マウス卵および胚における亜鉛キレート化は、卵母細胞内亜鉛濃度を低下させ、細胞内活性酸素レベルを上昇させ、細胞内亜鉛レベルの低下で見られる紡錘体の質の低下を伴う紡錘体の形態変化が観察されています。亜鉛スパークといって、受精後の透明帯の亜鉛濃度が300%上昇する現象があり、亜鉛スパークは、透明帯の硬化をもたらし、結果的に多精子をブロックします。

また亜鉛は、精子の酸化代謝に関与する重要な抗炎症因子です。その他の役割には、精子膜の安定化、受精能獲得、先体反応などがあります。精巣で亜鉛はライディッヒ細胞からのテストステロンの生成と分泌に不可欠であり、精子と精子集合体のゲノムの完全性を維持します。したがって、亜鉛欠乏症は、血清テストステロン濃度の低下、原発性精巣不全、黄体形成ホルモン受容体の機能低下、ステロイド合成の低下、および酸化ストレスによるライディッヒ細胞損傷にも関連しています。さまざまな障害や体温の上昇に伴う炎症過程は、活性酸素を誘発し、精巣の機能不全や精子の生産の変化にもつながります。

日本人の食事摂取基準(2020年版)では、18−49歳で亜鉛の推奨量は8mg/日で妊娠したら必要量は増加します。上限量は35mg/日となります。食事では、魚介類、赤身の肉、卵、マメ類、ナッツ類などに含まれ牡蠣は亜鉛が多い食物として有名です。ベジタリアンは亜鉛吸収を高める可能性のある肉を食べないため、低亜鉛血症になりやすいといわれています。また、ベジタリアンでなくともなかなか食事から亜鉛を多く摂取するのは難しく、サプリメントでの摂取をされる方も多いです。当院で取り扱いのある葉酸サプリ「マカナ」には、亜鉛が5.3mg配合されています。葉酸サプリの中に亜鉛が入っていることが多いのでサプリメントを服用するのも良いでしょう。

亜鉛の補給は、免疫力を高め、ウイルス性疾患と戦う上で有益である可能性があります。COVID-19 の臨床試験では高用量の亜鉛が使用された報告もあります。妊娠出産だけではなく、抗酸化および抗炎症作用をもつ亜鉛や、ビタミンC,D、プロバイオティクス(乳酸菌、ビフィズス菌)などCOVID-19対策としてもサプリメント活用してもよいかもしれません。