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卵胞の発育ステージに合わせたIVM

2018.08.07 研究結果

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

7月26日(木)、27日(金)に千葉県幕張メッセで開催された第36回 日本受精着床学会総会・学術講演会に参加してきました。今回のテーマが「生殖医療と社会の調和:子を望むカップルとともに」という事もあって、ヘルスケアやプレメディカルを専門とする企業などの一般の方でも触れやすい内容の発表も多くありました。

 

今回は、数多くの発表の中から私が特に興味を持った“卵子の体外成熟(IVM ; In Vitro Maturation)”に関する新しい知見をお伝えします。

 

IVMは、主にPCOS患者(多嚢胞性卵巣症候群:排卵が阻害されて卵子が排卵できなくなる症状)などにOHSS(卵巣過剰刺激症候群:卵巣刺激により卵胞が数多く育つことで腹部などに水がたまる症状)のリスクを防ぐために行われる事が多い手法です。卵巣刺激製剤の投与を少量にするか投与自体を無くして、発育していない小さい卵胞から卵子を採取します。小さい卵胞からは未成熟卵の卵子が採取されることが多いため、IVMを施してから顕微授精または体外受精へと進めます。もちろん、通常の採卵の際に、主席卵胞以外の小卵胞から未成熟の卵子が採取された場合にもIVMを行います。

 

IVMの利点はOHSSの危険性がないという点に加え、注射に伴う肉体的、精神的、経済的負担、通院の負担も軽減されます。一方で、卵胞が小さい事による採卵手技の困難さ、培養条件が十分検討されていないこと、それらに起因した成熟率の低さなどから、臨床成績は成熟卵と比較すると大きく遅れをとっているのが現状です。

 

今回の講演では、『卵胞発育ステージに合わせた IVM』という発表がありました。これは、小卵胞から取れた卵のステージにより培養条件を変えることでIVMの成績が向上するというものです。

PCOSの症例では、卵胞の大きさが10mm以上のものと10mm以下のものとで分類します。10mm以上のものはEGF-like factor(上皮成長因子様因子) や PGE2(プロスタグランジンE2)などの添加物を加えてIVMを行います。

10mm以下のものはFSH (卵胞刺激ホルモン)+エストロゲン+PDE 抑制剤(卵成熟まで減数分裂を停止させておく役割を持つ)を添加してIVMをおこない、さらにその後EGF-like factorや PGE2を添加してIVMを継続して成熟させます。

 

卵巣刺激を行った上で成熟卵が得られなかった症例では、採卵後卵子の周囲に付着している卵丘細胞が膨化してるものとしてないものに分類します。卵丘細胞の膨化は卵子が成熟しているかどうかの目安のひとつであり、大抵の場合は成熟しているのですが、卵丘細胞が膨化していても成熟していない卵子が存在します。

卵丘細胞が膨化してないものは、EGF-like factorや PGE2を添加してIVMを行います。膨化しているものは裸化(卵丘細胞を取り除く作業)をしてから未成熟が発覚する事があるため(※稀に、成熟していると思って裸化を施したら成熟していなかったということがあります)、卵丘細胞から得られる卵子に必要な栄養基質となるピルビン酸や乳酸、抗酸化因子の合成に必要なアミノ酸類、卵の細胞骨格を保持する細胞外マトリックス(ファイブロネクチン)を添加してIVMすることで、正常な卵成熟を誘導することができます。

 

このままの文章だとわかりづらいので、以上のことをまとめた表を作りました。

 

採卵は患者にとって身体的、経済的に負担が大きいため、IVMにより一つでも多くの良好胚をつくることが有益と考えられます。IVMは今後益々重要性を増すことが考えられます。今回の演題を拝聴して、我々もIVMについてさらに知見を増やしていかなければならないと感じました。