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胎児の成長促進にバイアグラを服用。果たして良いのか?悪いのか?

2018.08.16 研究結果

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

今回は、我々、生殖補助医療分野に関して、少しショッキングでかつ興味深いニュースが海外で報道されていましたのでご紹介していきたいと思います。

 

不妊治療、特に体外受精を受けている患者さんには高齢の方が多くいらっしゃいますが、高齢の方が妊娠した場合、胎盤の発達不良によって、胎児の成長が著しく阻害されるといった症例が数多く報告されています。

一方で、これらの症例には根本的な治療方法が確立されておらず、現在、様々な医療機関や研究機関で知見を集めているという状態です。

胎盤の発育不良は、早産や、重度の低出生体重児と密接に関連しており、胎児および出生児の生存の可能性を低下させると考えられています。原因としては、胎盤の発育不良により、胎児への血流が著しく制限される事などが挙げられます。つまり、体重を増加させる、あるいは出産までの時間を延ばすことが出来るといった投薬は、これらの症例においては、胎児にとって大きなメリットがあります。

 

2010年に、英国・リバプール大学のZarcko Alfirevic教授が率いる研究チームは、これらの症例に当てはまる妊娠中の女性を対象として、試験的に抗インポテンツ薬として知られるバイアグラ(※血流を促進する高い効果を持つ)を与える治験を行いました。
その結果、胎児の成長に関して一定の効果を示しましたが、治験を受けた全ての患者に当てはまるものでは無かったため、Alfirevic教授は「本研究では、効果を示した症例もあったが、赤ちゃんの成長を改善させるという点では恩恵を受けたとは言い難い」と述べていました。
一方で、この研究では対象となった症例数が少なかった事や、複数の患者において一定の効果を示していた事などから、現在、イギリス全土、オーストラリア、ニュージーランドなど世界各国で追加の調査が行われています。

 

オランダも例外ではなく、国内で最も大きい医療施設の一つであるアムステルダム大学メディカルセンターを含む11ヶ所の病院で、2020年までの長期に渡って同様の大規模実験が実施される予定でした。しかしながら、2018年の7月25日に非常に残念なニュースが報告されています。

オランダの研究では、妊娠中に胎盤の発育不良を認めた183人を対象とし、93人にジルデナフィル(※バイアグラのジェネリック薬)が、残りの90人にはプラセボ薬(有効成分を持たない薬)が与えられました。
すると、出生後20人の新生児に肺の異常が見つかりました。血液の流れを促進するバイアグラが、胎児および乳児の肺に致命的な損傷を引き起こしたと考えられていますが、この治験を率いる専門家達は「原因を理解するためには十分な知見が必要であり、現在、調査を進めている段階である」としています。

また、医療過誤は無かったという認識も示しています。

 

事実、イギリスとオーストラリアなどで既に行われた調査では、今回のような、バイアグラが関わったと示唆される合併症は一件も報告されていないため、再度徹底的な調査が必要であるとしています。

果たして、胎児の成長促進にバイアグラを服用することは、果たして良いのか悪いのか。健康な赤ちゃんの誕生を手助けしたい我々としても、続報が気になるトピックでした。