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フィットタイプのパンツを脱げば、精子の数が増加する??(男性不妊)

2018.08.30 男性不妊

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

35℃を超えるような猛暑日が続いていますが、皆さま体調を崩されたりはしていないでしょうか?

精子が温度変化に敏感であることは井上院長の妊活セミナーでもご紹介していますが、これほど毎日気温が高いと精子にも何か影響がありそうに思えてなりません。

そんな『精子と温度の関係性』について、2018年8月8日付のHuman Reproduction, Journal dey259,に新しい知見が発表されていたのでご紹介いたします。

 

米国・ハーバード公衆衛生大学院のJorge E Chavarro教授らの研究チームは、“ゆるい下着を着用すること”が、男性の精子の数と造精機能を制御するホルモンを改善するための簡単な方法となる可能性がある事を示唆しています。

 

Chavarro教授らのチームは、656人の男性を対象として、

① ゆるいタイプの下着を着用していたグループ

② 緊密にフィットするタイプの下着を着用していたグループ

の2つに選別して精液検査を行いました。

 

その結果、ゆるいタイプの下着を着用していた被験者の方が、緊密にフィットする下着を着用していた被験者よりも精液濃度が25%高かった事が示されました。
また興味深い事に、卵胞刺激ホルモン(FSH)と呼ばれる造精を精巣に促す際に分泌されるホルモンは、フィットするタイプの下着を着用していたグループで14%高かったことが示されました。

 

Chavarro教授は、要因の一つとして、『睾丸周囲の温度』が関係していると考察しています。
精子の産生は34℃以上の温度に敏感であることが知られており、37℃付近の体温では造精に不向きであるため、解剖学的に睾丸(陰嚢)は身体から垂れ下がった状態で位置しています。

ブリーフタイプやブーメランパンツのような下着のスタイルでは、陰嚢が身体に密着し睾丸の温度が上昇してしまいますが、ゆるいボクサータイプやトランクスパンツなどでは、より身体から離す事が出来ます。

 

イギリスやオーストラリアを中心に、不妊治療クリニックにて治療中の男性を対象として現在までに行われた大規模研究では、ゆるいタイプの下着を着用している男性は、密着するタイプの下着を着用している男性よりも精子濃度が高い(精子総数:17%↑、運動精子:33%↑)ことがわかっています。

本研究で、フィットするタイプの下着を着用していたグループでFSHが高い値を示した事については、睾丸周囲の温度の上昇によって精子数が著しく減少したため、造精を促すためにこのFSHが高値を示したのではと推測しています。
一方で、精子の形態評価については影響を受けておらず、Chavarro教授の発表でも形態評価について有意差は認められていませんでした。

 

本論文の共著者で栄養学に詳しいAudrey J Gaskins博士は、「年齢・BMI・食生活・喫煙・睡眠習慣など、造精に影響を及ぼす可能性のある因子を除外した場合、次に考慮されるのが下着内部の熱であり、この温度変化は問題の根源になりうる」と推測しています。

また、同研究チームのLidia Mínguez-Alarcón博士は、「このような単純なライフスタイルの変化が、男性の妊孕性を改善する可能性がある」と述べるとともに、FSHの数値から「本研究が、フィットするタイプの下着着用者が、体温によって睾丸を損傷させているという証拠になりえる」と見解を示しています。

 

Chavarro教授は、「あくまでこの研究は精子の量と質についてのものであり、受胎能力そのものではない」としているものの、「“タイト”から“ルーズ”への下着の切り替えは、潜在的に造精機能に問題を抱える男性にとっては改善を促す可能性があり、比較的安価で簡単に始めることが出来る」としています。

 

不妊症は女性の問題だけではなく、男性にも問題があることが多くあります。

Chavarro教授は最後に、「妊娠の成立はチームスポーツであり、不妊治療に男性がどのように貢献できるのかを考えて欲しい」とこの論文を締め括っています。

足を組んで座らない、長風呂はしないなど、少しだけ精子と温度に敏感になって考え、出来ることから始めてみませんか?