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現代人は精子数が減少している?!果ては人類滅亡か?!(男性不妊)

2018.09.13 男性不妊

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

不妊の原因は女性側と同程度に“男性側にも存在する”というお話しを過去にご紹介しましたが(こちら)、もしかしたら、今後『男性不妊』を示す病態が増えていくのではないか?と考えられるような、興味深い論文がHuman Reproduction Update, (doi:10,1093, journal dmx022)に掲載されていましたのでご紹介いたします。

 

エルサレム・ヘブライ大学の疫学者Hagai Levine博士は、過去に1973年から2011年までの間に実施された、男性の精子データに関する約200近い研究結果を、総合的に取りまとめて評価するといった過去最大規模の調査を行いました。

その結果、北アメリカ、ヨーロッパ全土、アジアの一部、オーストラリア、ニュージーランドにおいて、40歳未満の男性の精子数が著しく半減しているということを報告しています(精子濃度で52.4%減少↓、総精子数で59.3%減少↓)。

また、もしこのままの水準で男性での精子数が減少し続けるならば、人間は絶滅する可能性があると警告しています。

 

この論文の共著者で米・New YorkのIcahn School of Medicine at Mount Sinaiで公衆衛生学・生殖医学教授を勤めるShanna H Swan教授は「(精子減少の)このペースは、我々が推測していたものを遥かに上回っている。すでに生殖に悩む人々が増えている現状があるが、比較的近い将来にピークを迎えてしまうのではないかと非常に心配している」と述べています。

 

本論文では、北アメリカやヨーロッパといった先進国を中心に精子数の減少が見られ、反対に南米や東南アジア、アフリカなどの途上国では、このような顕著な減少は見られなかったと報告しています。
論文の共同研究者で、ブラジル・パラナ連邦大学で生殖毒性学の教授を勤めるAnderson Martino-Andrade教授は、精子数減少の原因の一つを我々の日常を取り巻く環境であると推測しています。
例えば、農薬やダイオキシンといった化学物質や、喫煙、飲酒、あるいは過度なストレスやダイエットを挙げ、「私たちが生きている環境、そしてその環境を取り巻く化学物質と真摯に向き合わなければ、将来どのようなことが起こるのかは容易に推測できる」と述べています。

 

一方で、一部の専門家達は、本論文の質を非常に高く評価しているものの今回の発表には懐疑的な見方を示しています。

本論文では、不妊治療施設に通院している男性(背景として、すでに男性不妊を診断されている可能性がある)のデータが混同されていたり、国によってはデータが少なかったりするなどの偏りもあり、追加の検証が必要であると指摘しています。

また、精子数をカウントするための技術的な昔今の変化も考慮されるべきであるとしています。

 

英国国営放送のインタビューにおいてLevine博士は、本論文を発表する前にも同様の論文を発表しており、今回はさらにデータが増えているものだと主張していますが、このような指摘を前向きに捉え、「議論はまだ解決されておらず、依然として多くの作業を同時に行う必要がある。より詳細な情報を得て提供するため、すでにデータの追加に取り組んでいる」と語っています。

英・シェーフィールド大学で男性病態学を勤めるAllan Pacey 教授は、“人類滅亡”という結論に達するには時期尚早なのではないか?という見解を述べる一方で「近年、多くの生殖科学者がヒトの男性の精子数が減少していることを主張しているが、この論文は多くの科学者が抱いていた“感覚”を“確信”に変える可能性がある」としています。

 

現在のところ、精子数減少の明確な証拠は明らかにはなっていません。Levine博士は「なぜ精子数が減少しているのかを慎重に見極め、その傾向を逆転させる方法を見つけることが急務である」と述べています。

 

平成27年度の厚生労働省の調査でも、男性不妊の患者数が年々増加していることが発表されていますが、こちらも要因の一つを、肥満・喫煙・飲酒・ストレス・睡眠などの生活習慣の変化としています。

明確な証拠というにはまだデータは足りないかもしれませんが、生活習慣を見直し、健康に気を付けることは、男性不妊、果ては人類滅亡を食い止める足掛かりになるかもしれませんね。