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不妊について知ろう!【第8回 男性因子 ~閉塞性無精子症と非閉塞性無精子症~ 】

2018.09.17 基礎知識

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

不妊原因のひとつとなっている男性因子の中で、特に発生が多いものとして造精機能障害(83%)があり、次に精路障害、性機能障害があります。 今回は造精機能障害と精路障害に関係のある、閉塞性無精子症(Obstructive Azoospermia; OA)と非閉塞性無精子症(Non-Obstructive Azoospermia; NOA)についてご紹介いたします。

精液中に精子が存在しないことを「無精子症」と呼びます。
その無精子症の主たる原因は2つあり、それが 閉塞性無精子症 非閉塞性無精子症 です。

 

閉塞性無精子症とは
産生された精子を体外に射出するための通路(精巣上体管や精管など)が何らかの原因でとじてしまう精路障害です。
精巣内で精子は産生されているのですが、精子が通るための管が閉鎖してしまうことで精子が体外に射出されることはなく、無精子症と診断されてしまいます。

発症原因
・精巣上体管の閉塞 (精巣上体炎など多くは原因不明)
・精管の閉塞
(先天性両側精管欠損症、精管結紮術後、鼠径ヘルニア術後の精管損傷、精路感染症など)
・射精管の閉塞 (前立腺嚢胞、感染症など)

適応により外科的手術である精路再建術(つまっている管を取り除きつなぎ合わせる手術)を行うことで管を通すことができれば、射出精液中に精子が出現する可能性があり自然妊娠が期待されます。また精子自体は産生されているため、 精巣内精子回収法(TESE:陰嚢を切開して直接精巣から精子がいそうな管(精細管)を探して精子を採取する手術) を行うことで、高確率で精子回収することができると言われています。

 

● 非閉塞性無精子症とは
精子は陰嚢内にある精巣で日々産生されていますが、その精巣がなんらかの原因で精子を産生できなくなった造精機能障害です。 精子が通る管は正常ですが精巣で精子の生産自体行われないため、無精子症と診断されます。

この場合、一部の症例を除いて、治療により精子産生が回復することはほぼありません。 そのため、精子を回収するためには外科的手術によりTESEを行うしかありませんが、TESEは根本的治療ではないため精子回収ができなければ意味のない手術となります。

発症原因
・低ゴナドトロピン性男子性腺機能低下症 (精子形成に必要なホルモンが不足している状態)
・クラインフェルター症候群などの精子形成に関係する染色体異常
・Y染色体微小欠失 (精子形成に関与する遺伝子が欠失している状態)
・停留精巣 (胎児のうちに陰嚢におりてくるはずの精巣が体内に残ってしまっている状態)
・精巣炎、精巣捻転症などの後天性のもの

非閉塞性無精子症でも、人によっては全く精子がつくられていないわけではなく、射出されるほどではないけれど局所的に精巣内で精子形成している場合もあります。 そのわずかな精子を探す際にTESEを行いますが、通常のTESEにおいては、精子のいる可能性が高い太い精細管を肉眼で観察できません。

そのため、 顕微鏡下精巣内精子回収法(Microdissection TESE; MD-TESEあるいはmicro-TESE) を行います。
普通のTESEと何が違うのかといいますと、精細管を探す際に手術用の顕微鏡を用いてより詳しく精細管を観察して精子形成を行っていそうな精細管を探索します。 閉塞性無精子症の方は精路が閉じているだけで精巣では精子形成を行っているため顕微鏡を用いなくとも精子形成を行っている精細管を探しやすいので使う必要性があまりありません。

このMD-TESEが提案されたことで非閉塞性無精子症の方でも精子が回収できる確率が向上しました。 ある程度精子が回収できれば、その後は顕微授精(ICSI)で卵子に受精させ、成長した胚を子宮に戻せば挙児を得られる可能性があります。


通常、精液検査を行い精液の中に精子がいないからといって、1度の検査で無精子症と判定することはありません。男性の精液の所見は体調などにより良くも悪くも毎回大きく変動するものであるため、最低でも数回検査を行って判定いたします。

当院ではTESEは行っていないため、上記のような症例の疑いがある場合は泌尿器科にご紹介させていただきます。 泌尿器科の治療にて精子形成が回復あるいはTESEなどで精子回収ができた折には、再度当院で挙児を得るためにともに頑張っていきましょう。