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高齢の不妊女性へ向けた新たな知見(不妊原因・高齢)

2018.11.01 研究結果

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

不妊の原因について、様々な要因があるということは過去にもご紹介していますが、やはり何よりも不妊にとって一番のネックになるのが“年齢”です。

女性の年齢と自然妊娠率

女性の自然妊娠率は36~37歳頃から急激に低下し始め、42歳以上の女性では、不妊治療を受けていない場合の妊娠率は5%以下(1/200以下)と言われています。また、高齢になると胎児の染色体異常や流産を引き起こす確率も一気に増加します。

そこで今回は、高齢の不妊女性にフォーカスを当てて、上記の原因の一部を解き明かすかもしれない最新の研究が、オンライン版の国際学術誌Nature Communications, Volume8, Article number: 15346 に掲載されていましたのでご紹介していきたいと思います。

『securin』卵子の成熟段階に必要不可欠なタンパク質

豪・メルボルンMonash University, Biomedicine Discovery Institute(Monash BDI)と英・ロンドンUniversity College Londonの共同研究チームは、高齢の女性の卵子において『securin』と呼ばれるタンパク質が制御・欠損することによって、胎児の染色体異常や流産が引き起こされる可能性を示唆しています。

卵子は排卵する前の卵胞内において、発育の最終ステージにわかりやすく言うと大きく2つの成熟段階(細胞分裂)を経ます。『securin』は、この2つの成熟段階の両方に必要不可欠なタンパク質であり、非常に重要な働きを示すことが先行研究より示されています。

Monash BDIとUniversity College Londonの共同研究チームは、女性の年齢が高くなるほど、卵子において『securin』を正常に制御する機構が崩壊しやすくなることを発見しました。

これによって、卵子の受精能や胚の発育過程に異常をきたし、結果的に胎児の染色体異常や流産が引き起こされると結論付けています。一方で、高齢女性の卵子におけるこの制御機構の発見は、高齢女性の卵子の質の改善へ向けた、新しい治療アプローチにつながる可能性を示唆しています。

この研究の総責任者で、Monash BDIで発生生物学教授を務めるJohn Carroll教授は「正常な受精や胚の発生につなげていくためには、最初の段階である“卵子”が高い品質であることが重要である」と述べるとともに、IVM培養(体外受精において用いられる、未熟卵子の体外成熟培養)を用いた新たな研究についても言及しています。

先述で、卵子が排卵前の発育の最終ステージに、大きく2つの成熟段階を経るということを説明しましたが、Carroll教授はこの2つの成熟段階を、IVM培養を用いて体外で人の手の下で行うことにより『securin』の正常な制御を行える可能性について考察しています。

年齢と不妊治療

不妊の原因がなにかしらの疾病に起因している場合、もしかしたら対症的な治療や体外受精を施すことで改善されるかもしれませんが、現状として、年齢(高齢)が不妊の原因となっている場合、40代半ばの方を10年以上も若返らせることは科学的に不可能ですので、治療する方法は無いに等しいと考えられています。

一方で、本研究のように『卵子の質を蘇らせる』といった研究は、現在世界中の科学者が様々な視点からアプローチしており、今後もしかしたら画期的な研究成果が報告されるかもしれません。

ただ、そういった研究報告に期待するよりも、少しでも年齢の若いうちからライフプランニングをしっかりとスケジューリングしていくことが、不妊を解消することに繋がります。

「妊活を始めたけど、なかなか上手くいかないなぁ‥‥」と感じている方、あるいは「40代だけど、不妊治療ってなるとちょっと抵抗があるなぁ‥‥」という方。
まずは簡単なご相談だけでも大丈夫ですのでお気軽にご来院ください。

早め早めの行動が、ゴールへの近道かもしれませんよ。