Staff Blog

「鍼灸治療」と不妊治療

2018.11.15 研究結果

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

 

妊活中の方や不妊治療を受けられている患者さんの中によく「妊活に効果があるとインターネットに書いてあったので‥‥」と、治療と並行して「鍼灸」「整体」に通われている方がいらっしゃいます。

 

「鍼灸」は、頭痛・関節痛・めまい・不眠・一部の神経系疾患などに効果があるとされ、WHO(世界保健機構)でも一定の効果が認められています。

 

今回は、世界で最も権威ある医学会の1つである米国医師会が発行する国際的医学誌Journal of American Medical Association 2018; 319(19): doi:10.1001より、体外受精(IVF)と鍼治療に関する最新の論文をご紹介します。

 

豪・シドニー大学ならびに国立保健医学研究所(NICM)で臨床医学教授を務めるCaroline A. Smith教授らの研究チームは、2011年6月から2015年10月の間に、オーストラリアとニュージーランドの16ヵ所のIVF治療施設にて治療を受けていた848人の患者を対象として、これらの患者を424人ずつ2つのグループにランダムに振り分けました。

 

1つのグループには、実際に皮膚に針を差し込む鍼治療を実施(治療群)し、もう1つのグループには実際に針は一切刺さず、ただプラスチックホルダーを強く押し付けただけの疑似治療を実施(偽の治療群)しました。

対象となった患者全体の平均年齢は35.4歳で、両方のグループの間に年齢や病歴など患者背景に偏りはありませんでした。
また、治療群なのか偽の治療群なのかが患者にわからないよう、これらの処置は通常よりも暗い部屋の中で行われました。

鍼治療が実施された身体の部位は腹部・上腕部・鼠径部であり、これらはどれも一般的に妊娠に効果があると考える鍼治療院が処置を施行する部位です。

 

その結果、治療群と偽の治療群の間には、移植率・着床率・出産率などどの比較検討においても有意な差は見られず、

『IVF治療においては、鍼治療が妊娠に対して効果があるとは言えない。』

と結論付けています。

しかし、Smith教授は、
「本研究によって、鍼治療自体は、IVF治療による妊娠の可能性を上昇させるといった効果が無いことが示されたが、

実際のIVF治療とは違う側面から、不妊治療を受ける女性に対して恩恵を与える可能性もある

としています。

 

例えば、生活習慣病や治療によるストレスが不妊症をより悪化させるかどうかについて言及し、「それらの疾病に対して、鍼治療の効果やリラックス作用が不妊を低減させる可能性については、今後の検討課題である」と述べています。

 

確かに、本実験でも、鍼治療を受けた多くの患者が(治療群・偽の治療群ともに)処置によってリラックスできたと感じていたと記されています。

過去に、『騒音問題』が男性不妊を引き起こす原因になり得るという論文を紹介しましたが(こちら)、リラックス出来る環境は、やはり不妊に対して一定の効果は示す可能性があるのかもしれません。

妊娠に対する直接的な効果を求めるのは難しかもしれませんが、身体はもちろん、心の健康増進につながるのであれば、鍼治療を上手に使っていくのも良い方法かもしれませんね。