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「人生は、時にはコーヒー一杯の暖かさの問題なのだ」 by R. Brautigan (食事と不妊)

2018.12.03 研究結果

渋谷バースクリニック培養部です

12月に入り、グッと寒く感じる季節になってまいりましたが、体調など崩されていませんでしょうか?

 

この季節になると、コンビニや自動販売機では青い「つめた~い」の表示から、赤い「あったか~い」の表示が増えてきて、冷えた身体を温めるためについついホットの缶コーヒーなんかを飲んでしまうという方も多くいらっしゃると思います。
また普段から、仕事の合間などに、コーヒーや紅茶、ココアなどの温かい飲み物で“一息入れる”という方も多いのではないでしょうか?

 

コーヒーやココアには、クロロゲン酸やカカオポリフェノールと呼ばれるポリフェノールが豊富に含まれており、その強い抗酸化成分から、アンチエイジング作用や脂肪の消費量が増加する効果などが知られている他、コーヒーの香り成分には、豆の種類によって、集中力を高めたり、反対にリラックスをさせたりする効果もあるようです。

 

そんな健康にとって良い働きをすると考えられえているコーヒーですが、一方で、

飲みすぎてしまうと、不妊治療や妊娠にとっては大きな悪影響を及ぼす可能性

が指摘されています。

 

今回は、2012年のヨーロッパ生殖医学会ESHREで発表された演目、ならびに、公衆衛生学分野で高い評価を受けている学術誌Public Health Nutritionで、2015年に発表された論文を取り上げていきたいと思います。

どちらも少し古い題材ではありますが、双方とも世界的に一定の評価を得ている発表ですのでご紹介いたします。

 

デンマーク・Aarhus Universitet病院付属IVF(体外受精)センターのUlrik Schi-ler Kesmodel博士らの研究チームは、過度なコーヒーの摂取が、IVF治療の成功率を著しく低下させると示唆しています。

 

先行研究から、カフェインやアルコールを摂取するほど、妊娠までに長い期間を要することなどが示されていましたが、不妊治療との関連性についてはこれまで明らかとなっていませんでした。

本研究でKesmodel博士は、デンマーク国内で不妊治療を行っている患者3959人を対象として、年齢、体格指数、生活習慣、および治療成績などについての大規模な統計解析を行いました。

その結果、一日に5杯以上のコーヒー(またはカフェインを多く含むお茶など)を摂取していた女性では、5杯未満の患者(全く摂取しない患者を含む)と比較し、臨床妊娠率が約50%、出生率が約40%低下することを示しました。

Kesmodel博士は「先行研究より、妊娠成立におけるカフェインやアルコールの影響が示されていたことからこの結果に対する驚きは無かったが、その影響の大きさについてはさらに探究しなければならない」と述べるとともに、「過度なコーヒーの摂取による妊娠への悪影響は、喫煙による有害レベルに匹敵する」との見解を示しています。

 

また、アイルランド・University College Dublin栄養生命科学ユニットの疫学者Ling-Wei Chen博士は、カフェインの摂取が妊娠中の母体へ与える影響についても指摘しています。

 

Chen博士らの研究チームは、カフェインが与える母体への影響について過去に報告されている複数の研究を取りまとめ、対象となった被験者をランダムに抽出して、低量摂取グループ、中量摂取グループ、高量摂取グループにそれぞれ分類し、各グループについて妊娠合併症や流産率などのリスク統計解析、ならびに用量反応解析を行いました。

その結果、母体のカフェイン摂取量が高くなるほど、妊娠合併症や流産のリスクが有意に上昇することが示されました。

Chen博士は、「潜在的な患者背景の影響を取り除くことが出来ないため、バイアスがかかっている可能性もある」としながらも、「母体のカフェイン摂取量が高いほど妊娠喪失のリスクが高くなることは信憑性が非常に高く、摂取に際してはガイドラインを遵守することが賢明である」と述べています。

 

WHO(世界保健機構)やFSA(英国食品基準庁)では、コーヒーだけでなく、紅茶、ココア、コーラやエナジードリンクにも高用量のカフェインが含まれているとして注意を呼びかけるとともに、妊娠中ではコーヒーの摂取をマグカップ2杯程度に留めるべきであると見解を示しています。

 

Kesmodel博士は、ESHREでの講演の最後に「コーヒーについての文献は限られているので、女性を不必要に心配させたくはない」と述べていますが、Chen博士同様にガイドラインに基づいて、過度な摂取を避けるように呼びかけています。


温かいコーヒーやココア、紅茶、緑茶などが美味しく感じる季節ではありますが、女性、特に妊娠を考えていらっしゃる方は、なるべくデカフェやカフェインレスのものを選ぶなど、カフェインを取り過ぎないように少し注意をしてみたほうが良いかもしれませんね。