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【院長ブログ】採卵後5日目の発育遅延の胚移植について

2019.03.29 研究結果

こんにちは

桜十字渋谷バースクリニック院長の井上です。

本日は採卵後5日目で発育の遅い胚について新鮮胚移植をするか凍結して胚移植をした方が良いか検討した報告をご紹介いたします。

Hum Reprod. 2019 1月
”Fresh transfer of Day 5 slow-growing embryos versus deferred transfer of vitrified, fully expanded Day 6 blastocysts: which is the optimal approach?”

一般的に採卵後5日後の新鮮胚移植において、発育の遅い胚は拡張胚盤胞と比較すると妊娠率が低下するといわれています。これは、子宮内膜の発育と胚の発育が同期していないからと説明されています。そのため、発育の遅い胚は、拡張胚盤胞まで培養し一旦凍結させておいて、後ほど凍結胚移植を行うことで、子宮内膜と胚を同期させるアプローチがあります。

この研究は、発育の遅い胚を新鮮胚移植した方がよいか、追加培養を行い凍結胚盤胞移植を行った方が良いか検討しております。

下記の方を対象としています。
年齢<40歳、桑実胚または発育の遅い胚盤胞(Gardner(ガードナー)分類 IおよびII)を選択的にday5に単一新鮮胚移植を行なった方。さらにday5までにGardner分類 Ⅲの完全胚盤胞にはなっていない群で、day6に完全胚盤胞を凍結でき、凍結胚移植を行なった方。

365人のGardner分類 IおよびII(I群)で新鮮胚移植した群、112人の新鮮桑実胚移植(II群)に分けられました。

(I群)の新鮮単一胚盤胞の移植の結果は、妊娠率31%および生児獲得率23.3%でありました。
凍結胚移植は妊娠率30.4%、生児獲得率20.3%でした。
交絡因子を除いても、新鮮胚移植と凍結胚移植の差は認めませんでした。

(II群)の新鮮桑実胚移植の移植の結果は、妊娠率5.3%および生児獲得率1.8%でありました。
凍結胚移植は妊娠率30.1%、生児獲得率20.5%でした。
新鮮胚移植と比較すると凍結胚移植は交絡因子をコントロールした後も、生児獲得率は有意に高い結果でした。

(I群)と(II群)の凍結胚移植の治療成績を比較すると結果に有意差は認めませんでした。

まとめ
完全胚盤胞まで成長しなかった胚を採卵後5日目に新鮮胚移植する場合、day6に凍結された完全胚盤胞と同様の成績をもたらすと予想されました。しかし新鮮桑実胚移植の生児獲得率は非常に低い結果でした。 桑実胚の場合は、完全胚盤胞まで培養延長し新鮮胚移植を避けることで、生児獲得率を有意に改善することができたという報告でした。

桑実胚の新鮮胚移植の結果が悪い原因としては、桑実胚の28%が胚盤胞への発育しないと報告されているかのも原因の一つと考えられます。また、day5の桑実胚の異数性率は79.8〜92.9%と報告されており、移植しても生児獲得率が低い原因と考えられます。
そのため、胚盤胞に発育すれば、ある程度胚を選択でき許容できる妊娠率、生児獲得率となり得ます。

ただ後ろ向き研究であり、新鮮胚と凍結胚はホルモン状態が異なること、長期培養する基準が良好な初期胚が3個存在する場合にのみ行われている、などバイアスがかかっている可能性が挙げられていました。