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PCOS患者の1親等(両親、姉妹、兄弟)において代謝障害の有病率が増加する

公開:2019.02.22 最終更新:2021.02.25

研究結果疾患

みなさんこんにちは

桜十字ウィメンズクリニック渋谷院長の井上です。

本日はPCOS患者の1親等(両親、姉妹、兄弟)において代謝障害の有病率が上がるのではないかという報告です。

2018年のFertility and Sterility
“Metabolic syndrome, hypertension, and hyperlipidemia in mothers, fathers, sisters, and brothers of women with polycystic ovary syndrome: a systematic review and meta-analysis”
をご紹介いたします。

この報告は19件の論文をまとめて解析したものになります。

多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は生殖年齢の女性の4%〜19%に見られ、生殖・代謝に関連しています。PCOSの病因は不明ですが、遺伝子、民族、環境、生活習慣の複雑な相互作用による病態と考えられています。

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PCOSは双子の間で80%の一致しており、1親等での高い遺伝性に加えて、多くの研究が代謝異常の有病率の増加を実証しています。

 

PCOSと代謝障害

今回の報告はPCOS患者の1親等におけるメタボリック症候群、高血圧、脂質異常症および他の代謝疾患の有病率を調査するため系統的レビューおよびメタ分析を行っています。

<結果>

  • PCOS女性の母親は、メタボリック症候群と脂質異常症の有病率が有意に高かった。
  • PCOS女性の父親は、高血圧、メタボリック症候群と脂質異常症の有病率が有意に高かった。
  • PCOS女性の姉妹は、高血圧およびメタボリック症候群の有病率が有意に高かった。
  • PCOS女性の兄弟は、高血圧の有病率が有意に高かった。

<結論>

このメタ分析はPCOS女性の母親、父親、姉妹、および兄弟がメタボリック症候群、高血圧、および脂質異常症のリスクが高くなることを報告しています。したがって、PCOSの診断は代謝障害に関して発端者だけでなく、父親、兄弟、特に母親および姉妹の徹底的なレビューを行うべきである。しかし、サンプルサイズが小さく明確な対照を用いた大規模な前向き研究が必要であると結論付けています。

東アジア系では高アンドロゲン血症でも多毛を来さない例も多く、欧米の診断基準での報告であるため、こちらの報告がそのまま日本に置き換えられるかは検討の余地があります。

しかし、PCOSが遺伝、民族、環境、生活習慣の複雑な相互作用によるものと考えるなら1親等での代謝障害も増加して不思議ではないかもしれません。日本やアジアでの検討も待たれます。