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妊娠に重要な栄養素『ビタミンD』と『カルシウム』のお話し ~Part.5~

2018.11.03 研究結果

桜十字渋谷バースクリニック培養部です。

前回、妊娠の前後における『ビタミンD』『カルシウム』の不足が、胎児の発育や生まれた後の新生児の健康状態にも大きな影響を与えるという研究論文をご紹介いたしました(こちら)。

 

ここまで、女性の健康や胎児へのリスクについて取り上げてきましたが、ビタミンDの欠乏による人体への影響は、産科や生殖補助医療の領域のみならず、糖尿病や高血圧、心血管疾患といった生活習慣病のリスクを高めることも指摘されており、年齢・性別・人種に関係無く人間が健康な状態を維持するためには欠かせない栄養素であるとされています。

 

また、男性にフォーカスを当てると、男性特有の疾患や精子の質といった過程にもビタミンDが大きく関わっているようです。
今回はいくつかの論文をご紹介しながら、これらの栄養素が男性の健康状態へ与える影響についてご紹介していきたいと思います。

 

米国初の心臓病専門医学会であるACCが発行する学術誌Journal of the American College of Cardiologyにおいて、アメリカ・Johns Hopkins School of Medicineの心臓病学者Erin Michos医師は、ビタミンDの欠乏を示す男性は“勃起不全(ED)”を発症するリスクが有意に高くなるという研究結果を発表しています。

 

この研究では、3486人を対象として、ED発症グループと非EDグループの2つのグループに分け、両者の間での栄養状態ならびに健康状態の比較を行いました。

 

その結果、ED発症グループでは、血中のビタミンD濃度が20ng/mL以下の値となるビタミンD欠乏を示す人の割合が、非EDグループと比較して有意に高く、糖尿病・高血圧・高コレステロール血症などの罹患率も有意に高いことが示されました。
さらに、ED発症グループでビタミンD欠乏を示した男性の多くは、喫煙や過度なアルコール摂取を日常的に行っている、あるいは過去に行っていた経験がありました。

 

Michos医師は、「本研究より、ビタミンD欠乏が、心血管疾患に加えてED発症のリスクを高めることが示唆された。ビタミンD欠乏を改善することで生活習慣病が改善することは先行研究より示されているが、EDの改善につながるかは今後の課題である」としています。

 

このように、『ビタミンD』は男性の最適な生殖活動に非常に重要な役割を果たす可能性が示唆されています。
加えて、ヨーロッパのヒトの生殖および発生学の公式学術誌であるHuman Reproductionには、男性の“精子の質”にも『ビタミンD』のレベルが大きく関与しているという研究が報告されています

 

デンマーク・ University of Copenhagen付属病院のMartin Blomberg Jensen医師は、精子の運動率とビタミンDのレベルに正の相関があることを示しました。本研究は、300人の健康な成人男性を対象として精液検査を行い、その値をもとに被験者の栄養状態や健康状態の比較検討を行いました。その結果、血中のビタミンDレベルが高いほど、精子運動率が高くなるという相関関係が示されました。

 

また、射出された精子に活性化ビタミンD試薬を添加したところ、精子の前進運動性が顕著に増加したことも示されました。Jensen医師は、「本研究はデータがまだ不十分ではあり、既存の治療法を変えるほどのインパクトはまだ無いが、ビタミンDが精子に影響を及ぼすという新しい説を明らかにした」としています。

 

また、この論文の共著者で、University of Copenhagen生殖医療部門のAnders Juul教授は、「精子の質に影響を与えるものには多くの要因が考えられるが、遺伝的な要因あるいは胎児期の生殖器系の奇形などを除けば、成人男性へのビタミンDの補充が精液の質を改善する可能性もある」と述べています。

 

その一方で、「本研究は健康な男性を対象としたものであり、ビタミンDをはじめとして、抗酸化物質、亜鉛、鉄といった栄養素を含む食事やサプリメントが、男性不妊を認めるケースにおいて精子の質を改善するかどうかを判断するには不十分である」としています。

 

妊娠の成立は、女性だけでなく男性の健康状態も大きく影響します。赤ちゃんを迎えるため、バランスの良い食事や太陽の光をたくさん浴びながらの適度な運動など、夫婦で一緒に、積極的に妊活に取り組んでいきましょう。